Dior Homme 2005aw 伝説と呼ばれているグラム期 「グラム」とは、ロックミュージックのひとつ、グラムロックに由来しています。日本で言うならば、玉置浩二さんのスタイルはまさにグラムです。Dior Homme 2006ss The BeatlesやThe Jamを連想させるモッズスタイルは、正に英国ロックを象徴するものです。
Dior退任後、約5年の月日を経てファッション業界に戻ってきたHedi SlimaneのSaint Laurentでのクリエーションのキーワードは、①Yves Saint Laurentへのオマージュ、②英国ロックスタイル、③LAグランジロックです。
2013~2016 クリエイティブディレクターを務めた Saint LaurentSaint Laurent 2013aw
Saint Laurentという偉大なメゾンの大役を担うべく、彼はYves Saint Laurentが残したレガシーを大切にしました。Yves Saint Laurentの名作・スモーキングをモダナイズしたこのスモーキングジャケットは、ファーストコレクションのファーストルックを飾ったのでした。
Saint Laurent 2016aw ファーストルック。 70年代を代表するような着丈の長いジャケットとフレアパンツのタキシード3ピース。Saint Laurent 2016aw このモデルさん、少しだけOfficial髭男dismのボーカルに似てませんか? そんなことは置いといて、ボーダーはフレンチの代名詞ですよね。金ボタンのコートは、ナポレオンコート。フランスを代表する英雄を連想させます。
さて、かなり遠回りをしてきましたが、本題に戻りましょう。
ここで改めて、今季、CELINE 06 2020awを見ていただきたいと思います。
アンヴァリッドが最高に似合う金ボタンのナポレオンコート。フリルのシャツには蝶ネクタイを合わせ、ベルベットのパンツで更に上品に。CELINEに就任した後も作り続けているスモーキングは、Yves Saint Laurentへのオマージュが残っているからでしょうか。ブリティッシュの雰囲気を持つガンクラブ柄のコート。ベルテットやエポレットなどのディテールは英国を代表するトレンチコートと共通しています。こちらはかなりウィメンズのスタイルに振り切ったルック。けれども、女装しているようには思わせない。もしかして、この人アンドロジニーなのかも、?と思わせる絶妙なバランス感。テーラードといえばブリティッシュ。Hediのテーラードの肩のラインは、常にブリティッシュを象徴するコンケープド(肩先にかけて上がり、お堅い印象を与えるシルエット)になっています。デニムジャケットは、LAのグランジにはかかせない1着。スタッズをつけることで、さらにロックスターな気分に。キラキラと輝くそのスーツは、まさにロックスターそのもの。ボウタイブラウスを合わせることで、ジェンダレスを唱う現代のロックスタースタイルに。ブーツのヒールは80mm。Saint Laurent 2015awのような高さで、ほとんどウィメンズに近いシルエットになっています。ブーツは、クラシックなカーフスキンやスエードから、ロックなシルバー、ゴールド、パイソン柄など様々。スキニーなスカーフは、Dior時代から作り続けているHediの定番。ウィメンズのようなナイーブな雰囲気を出す、彼のスタイルにはかかせないアイテムです。今季は、メンズのバッグとしてショルダーバッグを提案。長年女性のものとされてきていたものを、今は男性が持つ時代なのです。
これはメンズのファーストシーズンのファーストルック。Monsieur Yves Saint Laurentが、自身の最高傑作だと言っていたスモーキング(タキシード)を現代風に解釈してファーストルックでボンバイヤですよ。ブランドを重んじながら彼の世界観を体現してます。素晴らしいバランス感。このシーズンに数多くの名作が生まれましたね。このライダース、黒スキニーパンツ、ブーツは今もSaint Laurentの定番として受け継がれています。これを超すシルエットは存在しません。しません。