
CELINE by Hedi Slimane 06シーズン、2020AW。2020年2月28日にパリのアンヴァリッドでショーが行われました。

06シーズン目、メンズでは4シーズン目を迎える2020aw。01以来のウィメンズとの合同形式となり、メンズとウィメンズのテーマ性を一貫しているHediの真髄を見ることが出来るシーズンとなりました。

フレンチニューウェーブのダークなムードを持つ、若者向けのテーラードスタイルが多く見られました。

英国ロックの歴史:モッズ、ニューウェーブ、パンクの要素を取り入れた、クラシカルなテーラードスタイルが提案されました。

フレアパンツに胸元を開けたシャツ、テーラードジャケットの組み合わせは正にフランスのシャンソンを代表するセルジュゲンスブールへのオマージュが感じられました。
01.02で見られたようなロンドンのロックスタイルで来るのか、04で見せたフレンチ・ブルジョワスタイルで来るのか。世界中のファッショニスタがパリの廃兵院に注目を集めました。

いつも通り予定より30分ほど遅れて開始したショー。今回はコロナウイルスの影響で著名人はあまり見られず、毎回来場していたBLACKPINKのLISAもその美貌を表すことはありませんでした。
毎回ゴージャスな照明で、ロックミュージシャンのライブのような演出をするHedi Slimane。今季はCELINEの伝統的な「トリオンフ」モチーフの照明をバックに、スーパースキニーなモデルたちが長い髪を靡かせながら闊歩しました。



今季も、04 2020ssで打ち出したフレンチ・ブルジョワテーラードスタイルを継続しました。Hediを代表するブラックも抑えられ、ネイビーやグレーなど優しい印象を与えるクラシカルな色味に。



今季のコレクション、ずばり、Hedi Slimaneの集大成であると言えます。
Dior時代からこの約20年間、ファッション業界の最前線を走る彼は、世界中に多くの影響を与えてきました。
その数々のコレクションで見せたインスピレーション全てが、今季のクリエーションには落とし込まれているのです。
さらに紐解くため、Hedi Slimaneのアーカイブをさらっと振り返っていきましょう。

まずDior Homme時代の初期には、ドイツ・ベルリンの無機質さと、アンドロジニー(両性具有)のスタイルを取り入れました。

鎧のように強く、女性のように美しい男性。これがHedi Slimaneが戦慄のデビューを飾る最初のクリエーションのベースとなりました。
その後、Hediの関心はロックミュージック、そしてロックの聖地、イギリス・ロンドンへと移りました。

伝説と呼ばれているグラム期
「グラム」とは、ロックミュージックのひとつ、グラムロックに由来しています。日本で言うならば、玉置浩二さんのスタイルはまさにグラムです。

The BeatlesやThe Jamを連想させるモッズスタイルは、正に英国ロックを象徴するものです。
Dior退任後、約5年の月日を経てファッション業界に戻ってきたHedi SlimaneのSaint Laurentでのクリエーションのキーワードは、①Yves Saint Laurentへのオマージュ、②英国ロックスタイル、③LAグランジロックです。

Saint Laurent

Saint Laurentという偉大なメゾンの大役を担うべく、彼はYves Saint Laurentが残したレガシーを大切にしました。Yves Saint Laurentの名作・スモーキングをモダナイズしたこのスモーキングジャケットは、ファーストコレクションのファーストルックを飾ったのでした。

Dior時代後期に関心を寄せていた英国ロック、Saint Laurentに就任してからはかなり多く取り入れました。特に「テッズスタイル」はSaint Laurentのブランドコンセプトともマッチし、多く見られました。

そして何よりSaint Laurentが人気となる一大ブームを巻き起こしたのが、LAのグランジロックスタイル。Nirvanaのボーカル、カート・コバーンや、ジミ・ヘンドリックスを思わせるルックは、日本を始め世界中で大人気となりました。
ロンドン・LAからのインスピレーションが多かった中で、1度だけ異彩を放ったシーズンがあります。それは2015aw。

グランジの要素は全く感じられず、レディースのようなスーパースキニーなシルエットともに打ち出されたのは、フレンチロックスタイルでした。
今回の2020awを紐解く鍵は、ここにあります。2015aw。Hedi Slimaneが故郷であるパリに想いを馳せたシーズンです。

Saint Laurent 2015awのショーミュージックを手がけたバンドは、フランスのロックバンド、”La Femme”でした。これまでLAのアンダーグラウンドなロックバンドの音楽を採用してきたHediが、フレンチロックに関心が移った、といえるのでしょうか。

いえ、移ったのではなく、「戻った」のです。
そもそもパリで生まれ育ち、若い頃はフレンチロックの音楽に乗せてクラブで踊っていた彼。Diorのデザイナーを始める頃にはそんなフレンチロックの衰退に退屈さを覚え、ベルリンやロンドン、LAなど、常に何か新しく、面白く、そして刺激の多い場所へ関心を寄せていました。
そんな時に現れたのが、フレンチロックの新生、La Femme。彼らの音楽は、伝統的なフレンチロックを取り入れつつ、今の時代にあったサウンドであり、それがHediの心を撃ち抜いたのでしょう。

ちなみにLa Femmeは、CELINEのファーストコレクションにも楽曲を提供しています。その名も「Runway」。新時代の幕開けを感じさせるクールな曲です。
CELINE 2019ss
ところで、Saint Laurent期最後のシーズン、2016awでは、LAでコンサートのような大規模なコレクションを開催しました。

この時、もちろんLAグランジの雰囲気を感じさせるものもありましたが、かなり70年代のフレンチ、ブルジョワな雰囲気を持っていることは、お分かりいただけると思います。

ファーストルック。
70年代を代表するような着丈の長いジャケットとフレアパンツのタキシード3ピース。

このモデルさん、少しだけOfficial髭男dismのボーカルに似てませんか?
そんなことは置いといて、ボーダーはフレンチの代名詞ですよね。金ボタンのコートは、ナポレオンコート。フランスを代表する英雄を連想させます。
さて、かなり遠回りをしてきましたが、本題に戻りましょう。
ここで改めて、今季、CELINE 06 2020awを見ていただきたいと思います。











さて、お分かりいただけたでしょうか。
今季のコレクションは、決して表面的には語ることの出来ない、Hedi Slimaneの集大成だったのです。
Dior時代のアンドロジニーなスタイル、Saint Laurent時代の英国ロックと、LAのグランジロック、そして、CELINEに移ってからインスピレーションとしているフレンチロック。全ての要素をミックスし、絶妙のバランスで具現化。
細かいディテールを見ても、パンツの緩いフレアはDior時代からの定番だったことなど、Hedi Slimaneの魂が随所に散りばめられていることが分かります。

21世紀を代表するデザイナーの集大成。あなたはどれを選びますか?

ご覧頂きありがとうございました。この2020awの名作たちが店頭に並ぶ頃には、それを身にまとって素敵な景色を見にお出かけできる世界になっていてほしいと心から願っております。